お釈迦様がスッタニパータで説かれたものそれは、人々が苦しみから脱出する方法です。
人は、物事をすぐに、好き、嫌いに分けて、好きなものを取ろうとして、嫌いなものを排除します。あるいは、自分の理想にこだわってその状態を何とか保ちたいと思うのです。しかし、この世は、無常つまり、常に変化すると言う性質がありますから、同じ状態にこだわると状態は変化しますから苦しみます。あるいは、好き⇔嫌いと言う運動も起こりますので、何かを好きだと思って掴むとそれは苦しみも同時に掴むことになります。世の中の人々の苦しみは、このようなこだわりによるものだとお釈迦様はおっしゃっているのですね。人々は、すぐに両極端に分けて好きなものに飛びつくので、そのものの性質がわからずに苦しみにも飛びついているわけです。
そこで、お釈迦様は、まず、自分の好き、嫌いと言う運動によく気をつけて、その思考を止める事を教えられました。つまり、欲しいと言う思考を止めて掴まない事。それは、苦しみを掴まない事だからです。
そして、その思考を止めた目で分別する対象をよく観察すると、その対象の性質がわかってきます。それは無常だと言う事。つまり掴んでも一時的だと言う事。それは変化し、いずれ自分のもとを離れますから、対象に執着をすることは苦しみだとわかります。これが智慧です。
更に自分の心を観察すると。ある想いが立ち上がって、時間と共に消滅することがわかります。つまり心も変化する。無常ですね。ですから、心も一時的な想いにこだわったり、同じ状態に執着をすると苦しむと言う事がわかります。
お釈迦様は世の人々が苦しみから脱出するには、まず、人間的思考の運動(好き⇔嫌い)を止める事。次にその止めた目で対象、あるいは自分の心をよく観察することで、対象の性質がわかり、自分の心の性質もわかり、何かを掴もうとせず、手放す事。それが人が苦しみから脱出する唯一の方法と教えられたのです。