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８０２ かれはこの世において、見たこと、学んだこと、あるいは思索したことに関して、微塵（みじん）ほどの妄想（もうそう）をも構（かま）えていない。いかなる偏見をも執することのないそのバラモンを、この世においてどうして妄想分別させることができるであろうか？
かれはこの世において、見たこと、学んだこと、あるいは思索したことに関して、微塵（みじん）ほどの人間的思考の運動（正⇔誤）による反応の仕方をも構（かま）えていない。いかなる両極端の偏った見方をも執することのないその修行者を、この世においてどうして妄想分別させることができるであろうか？かれは、妄想分別すなわち人間的思考の運動による反応の仕方を制して遂には彼の岸へと到達したのである。
８０１ かれはここで、両極端に対し、種々の生存に対し、この世についても、来世についても、願うことがない。諸々の事物に関して断定を下して得た固執の住居（すまい）は、かれには何も存在しない。
かれはここで、人間的思考の運動による反応のしかたである両極端をはなれ、種々の生存に対し、この世についても、来世についても、人間的思考の運動を制し、願うことがない。諸々の事物に関して両極端の反応の仕方をして断定を下して得た固執の住居（すまい）は、かれには何も存在しない。かれは、自らの人間的思考の運動を制して遂には安穏を観たのである。
８００ かれは、すでに得た（見解）〔先入見〕を捨て去って執着することなく、学識に関しても特に依拠することをしない。人々は（種々異なった見解に）分かれているが、かれは実に党派に盲従（分別なく人の言うがままに従うこと）せずいかなる見解もをそのまま信ずることはない。
かれは、すでに情報として得た見解、先入見、すなわち人間的思考の運動（正⇔誤）による反応の仕方を捨て去って執着することなく、学識に関しても特に依拠することをしない。人々は種々異なった見解（人間的思考の運動による反応の仕方）に分かれているが、かれは実に人間的思考の反応の仕方が同じ党派に盲従（分別なく人の言うがままに従うこと）せず、いかなる見解（人間的思考の運動による分別）もをそのまま信ずることはない。
７９９ 智慧に関しても、戒律や道徳に関しても、世間において偏見をかまえてはならない。自分を他人と「等しい」と示すことなく、他人よりも「劣っている」とか、或いは「勝れている」とか考えてはならない。
智慧に関しても、戒律や道徳に関しても、世間において人間的思考の運動（正⇔誤）による偏見をかまえてはならない。人間的思考の運動（優⇔劣）によって自分を他人と「等しい」と示すことなく、他人よりも「劣っている」とか、或いは「勝れている」とか考えてはならない。これらは、全て激流である人間的思考の運動なのである。聖者はそれを知って人間的思考の運動によく気をつけ安穏を観たのである。
７９８ 人が何か或（あ）るものに依拠（いきょ、いぞん）して「その他のものはつまらぬものである」と見なすならば、それは実にこだわりである、と（真理に達した人々）は語る。それ故に修行者は、見たこと・学んだこと・思索したこと、または戒律や道徳にこだわってはならない。
人が何か或（あ）るものに依拠（いきょ、いぞん）して「その他のものはつまらぬものである」と見なすならば、それは実に人間的思考の運動（正⇔誤）である、と真理に達した人々は語る。それ故に修行者は、見たこと・学んだこと・思索したこと、または戒律や道徳にたいしても人間的思考の運動（正⇔誤）を制しなくてはならない。
７９７ かれ（＝世間の思想家）は、見たこと・学んだこと・戒律や道徳・思索したことについて、自分の奉じていることのうちにのみすぐれた実りを見、そこで、それだけに執着して、それ以外の他のものをすべてつまらぬものであると見なす。
かれ（＝世間の思想家）は、見たこと・学んだこと・戒律や道徳・思索したことについて、人間的思考の運動（正⇔誤）の反応をし、自分の奉じていることのうちにのみすぐれた実りを見、そこで、それだけが正しいと、執着して、それ以外の他のものをすべて誤り、すなわちつまらぬものであると見なす。このような思考の運動が人間的思考の運動であり、見方が自分よりに偏って他を受け入れない事によって視野が狭くなり、全体を見ることができないのである。
７９６ 世間では、人は諸々の見解のうちで勝（すぐ）れているとみなす見解を「最上のもの」であると考えて、それよりも他の見解はすべて「つまらないものである」と説く。それ故にかれは諸々の論争を超えることがない。
世間では、人は、人間的思考の運動（正⇔誤）の運動によって、諸々の見解のうちで勝（すぐ）れているとみなす見解を「最上のもの（正）」であると考えて、それよりも他の見解はすべて「つまらないものである（誤）」と説く。それ故にかれは諸々の論争すなわち人間的思考の運動（正⇔誤）を超えることがない。それは、運動をするので、あるときは正しいと感じ、またあるときは誤りであると感じる運動をするのである。
７９５ （真の）バラモンは、（煩悩の）範囲をのり超えている。かれが何ものかを知りあるいは見ても、執着することがない。かれは欲を貪ることなく、また離欲を貪ることもない。かれは（この世ではこれが最上のものである）と固執することもない。
真の修行者は、人間的思考の運動による反応の仕方をのり超えている。かれが何ものかを知りあるいは見ても、分別することがないので、執着することがない。かれは両極端の欲を貪ることなく、また両極端から離れようと言う想いである離欲を貪ることもない。かれはこの世ではこれが最上のものであるとその考え方に固執することもない。かれはあらゆる面において人間的思考の運動（快⇔不快）を制し遂には彼の岸へと到達したのである。
７９４ かれらははからいをなすことなく、（何物かを）特に重んずることもなく、「これこそ究極の清らかなことだ」と語ることもない。結ばれた執着のきずなをすて去って、世間の何ものについても願望を起こすことがない。
かれらは、人間的思考の運動である両極端の反応を制し、それを得ようと、はからいをなすことなく、分けないので、何物かを特に重んずることもなく、「これこそ究極の清らかなことだ」と反応することもない。人間的思考の運動（快⇔不快）の反応の仕方によって結ばれた執着のきずなをすて去って、世間の何ものについても両極端の願望を起こすことがない。それが聖者である。と師は言われた。
７９３ かれは一切の事物について、見たり学んだり思索したことを制し、支配している。このように観じ、覆われることなしにふるまう人を、この世でどうして妄想分別させることができようか。
かれは一切の事物について、見たり学んだり思索したことに対する自らの人間的思考の運動（正⇔誤）による両極端の反応の仕方を制し、支配（制）している。このように観じ、人間的思考の運動（正⇔誤）に覆われることなしにふるまう人を、この世でどうして両極端の妄想分別をさせることができようか。