796 世間では、人は諸々の見解のうちで勝(すぐ)れているとみなす見解を「最上のもの」であると考えて、それよりも他の見解はすべて「つまらないものである」と説く。それ故にかれは諸々の論争を超えることがない。
世の中には、様々な見方があるが、人は、その中で自分の見方によって最も勝れているとみなす見解を、最上のものであると考えて、他のものは、すべて「つまらないものである」と説く。それゆえに世間では論争がなくなることはない。人には、この人間的思考の運動がある。すなわち、優⇔劣の運動である。この運動を繰り返し、自分の快、不快にもとづいて都合がよいもののみを優れているとみなし、不都合なものを劣っているとみなす。そしてお互いの都合がぶつかりあい論争に及ぶのである。聖者は、自らの人間的思考の運動を止め、様々な見方を観る。全てを鏡のような境地で見ることができる聖者はそれぞれの特徴を活かし、世の中を照らして遍歴する。
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